Special Issue
進化し続けるシートづくり

テイ・エス テックが自動車のシートをつくり始めてから、60年が経過します。これまでを振り返ると、社会における自動車の位置づけの変化とともに、お客さまがシートに求めるニーズも大きく変わってきました。人と自動車の関わりは、19世紀後半までさかのぼります。馬車に代わる『人を運ぶ道具』として発明された自動車が日本に入ってきたのは、20世紀になってから。そして、1960年代に入ってようやく自動車は身近になり、たくさんの人や荷物を運ぶ道具として活躍するようになります。テイ・エス テック(当時は東京シート株式会社)が四輪車用シートの生産を手がけたのは、まさに自動車産業が盛んになり始めた1965年でした。創業から手がけてきた、「二輪車用シートにデザインパターンを施す加工技術」を四輪車用シートに応用し、丈夫で耐久性に優れたシートを軽自動車向けに供給していました。

1980's快適性の尺度

1980年代になると自動車は、移動手段というだけでなく、所有者のステータスを表す存在へと変化していきました。シートは、インテリアデザインの重要な位置を占めるようになると同時に、自動車の高性能化や交通網の発達により当たり前となった長距離運転を支える機能が望まれるようになりました。長時間の運転は、ドライバーにとって身動きしにくい状況が続き疲れやすくなります。こうした課題を受けて「長時間運転しても、快適で疲れにくい」シートをつくりあげることが「テイ・エス テックの使命」となり、それは今も変わらない当社の商品づくりの原点となっています。
課せられた使命を果たすべく当社が取組んだのが、「快適性の数値化」でした。シートについての快適性指標を設定し、ドライバーの「疲れ」を数値として把握し製品開発に役立てたのです。具体的には、シート座面が自動車の振動をどれだけ吸収できるのかを評価する「クッション性評価」や、実際の運転姿勢と理想姿勢との脊柱形状の差異を評価する「腰椎形状評価」、さらに社内のエキスパートによる、運転時におけるシートのサポート性やペダル操作への影響も考慮した「官能評価」などを独自に理論化し、「快適で疲れにくい」シート開発に反映しました。

ホンダ プレリュードシート 着座状態の人体位置を数値化

1990'sアレンジできる機能

1990年代には家族や仲間と楽しく過ごせる空間であることも求められ、シートの「快適」が持つ意味も広がり、テイ・エス テックは多岐にわたる「快適性の追求」を行うようになりました。そうした取組みの成果のひとつが、乗車シーンに合わせて変化させるシートアレンジです。蓄積してきた機構設計スキルをベースに、様々な使い勝手を想定した検証、強度、耐久性の試験などを経て、製品化しました。
当社が「快適」とともに高い意識を持って突き詰めているのが「乗員の安全」です。創業当初から、JIS規格よりも厳格な社内規格を設け、製品の設計時から品質管理を行っています。2000年代に入ると、アメリカにおいて、衝突時における自動車の安全性を評価するIIHS(米国道路安全保険協会)が後面衝突の安全性評価項目を設けたことを受け、2005年モデルのホンダCIVIC用シートに革新的な頸部傷害値低減技術となる「アクティブヘッドレスト」を搭載し、いち早くIIHSから最高ランクである「GOOD」の評価を獲得しました。同技術搭載のシートは、新たな姿勢理論に基づき、ランバーサポートに頼らずに理想姿勢を得るための効率的な人体支持構造に設計されており、最高の安全性を確保しながら、劇的な疲労の軽減を実現しています。

2代目 ホンダ ステップワゴン レストランモード

2代目 ホンダ ステップワゴン レストランモード

2000's安全性という価値

当社シートにおいて快適性と両立した安全性能は、今ではEURO-NCAP(欧州における自動車安全評価機関)をはじめ、どの地域においても後面衝突に対するトップクラスの安全性能を認められるようになりました。
頸部傷害値低減をめぐる技術は、現在もなお革新され続けています。最新鋭の試験設備やシミュレーション解析の導入により、衝突時の人体の挙動に対応するシートの設計ノウハウを構築した結果、2015年に発表されたホンダCIVIC用シートでは、アクティブヘッドレスト機構がなくとも、同等以上の安全性能を有し、快適で軽量、しかも価格を抑えて提供できるようになっています。
「安全で快適」のもっとその先へ。私たちはコーポレートメッセージ「Beyond Comfort」に込めた想いの具現化に取組み続けます。

安全性という価値

2010'sシートの電装化

快適で安全な、魅力あるシートを進化させるには、電装部品が欠かせません。当社では、新しい機能を持つシートについて、お客さまへの提案から具現化までを自己完結で行っています。
従来、座席調整を手動で行うシートフレームと電動で行う電装部品の付いたシートフレームでは、構造が異なっていたため、違う部品が使われていました。その分、電装部品付きシートの価格が高くなっていました。そこで当社では「フレームの共有化」「部品の最少化」を進めることで、より多くのお客さまに提供できるよう、実現可能性の検討と研究を重ねました。その結果、専用部品を最小化した電動シートフレームを、ホンダCIVICに搭載することができました。
この技術は、さまざまな工場での生産条件に対応する「グローバルスタンダードフレーム」として世界への展開体制を整え、各生産拠点からお客さまに供給できるようになりました。

シートの電装化

2020's新たな価値創出

大変革期を迎えた自動車業界において、自動車に求められる機能や価値は大きく変化しました。そのような中でも、常にお客さまの期待を超える魅力ある製品の提供を目指して、自動車の枠にとらわれない発想で取り組む「新魅力商品創出プロジェクト」の推進など、将来を見据えた新たな価値創出に取り組んでいます。

新たな価値創出

Beyond Comfort

今に縛られず、今を超えて創造し、1人でも多くのステークホルダーに「喜び」を提供していきたい…
グローバルスタンダードフレームで成し遂げたように、
当グループはシートの進化への想いを少しずつ、しかし着実に製品化につなげるべく挑戦を続けます。